「母乳バンク」という言葉を聞いたことはありませんか?母乳には赤ちゃんが成長するために必要な成分がたくさん含まれています。
特に早産で生まれNICUに入院する赤ちゃんにとっては、消化の良い母乳がぴったり。しかし様々な事情により母乳が出ないママやあげられないママがいます。
そんな時に注目したいのが「母乳バンク」です。今回はまだ日本に馴染みのない、母乳バンクについてご紹介します。
ドナーミルクや母乳バンクってそもそも何?
ドナーと言えば臓器提供を思い出す人も多いことでしょう。
しかし母乳がドナーとして提供できる「母乳バンク」を知っていますか?
早産で生まれた赤ちゃんは体の機能が未熟なため、免疫が少なく病気になりやすいといわれています。
そんな赤ちゃんに出産後2~3日以内に母乳を飲ませると壊死性腸炎や未熟児網膜症、慢性的な肺疾患などの病気を防げるのです。
しかし出産後誰もがすぐに母乳が出るわけではありません。出産経験のある人であればわかるかと思いますが、出産後2~3日は本当に絞っても滲む程度しか出ないのです。
さらに早産で生まれた赤ちゃんはか弱く、点滴をしていることがほとんどです。
ゆうもNICUに入院中は点滴をし、水分や栄養をとっていました。
母乳は赤ちゃんにとって消化もよく、栄養面でも優れているため、通常より早く点滴を外すことができるといわれています。
NICUの赤ちゃんに十分な母乳を与えるために誕生したのが、「母乳バンク」なのです。
母乳バンクではドナーから預かった母乳(ドナーミルク)を冷凍保存や減菌処理などを行ったあと、赤ちゃんに提供します。
母乳バンクの歴史
母乳バンクはヨーロッパでは100年以上の歴史があります。
最近ではオーストラリアや中国・インド・フィリピンなどでも普及が始まっており、世界中に広がりつつあるのです。母乳バンクは世界中で赤ちゃんを助けているのですね。
日本では、2013年に初となる母乳バンクが昭和大学病院に誕生しました。
まだまだ少ない母乳バンクですが、日本でも2022年を目標に全国の総合周産期医療センター、またはその近隣拠点に増える予定です。
私の場合はゆうが生後2日で遠くのNICUに運ばれ、私自身は入院中でしたので授乳はできませんでした。
搾乳し、冷凍はしていたのですが、毎日十分な母乳を届けられたとは思えません。
早産児と母乳の相性を考えると、なるべく飲ませたいもの。もし母乳バンクがもっと身近にあれば、絶対利用していました。
母乳バンクのドナーになるための条件は?
母乳バンクは、必要以上にたくさん母乳が出るママから余った母乳を提供してもらい、適切に検査したうえで保存しています。
そのため一定の条件を満たせば、ドナーとして母乳を「おすそわけ」できるのです。
ドナーになれる条件
- 自身の子供が必要をする以上に母乳が出ること
- これまでに輸血や臓器移植を受けていないこと
- 血液検査に異常がないこと
- その他感染するような病気にかかっていないこと
母乳バンクに提供される母乳は、あくまで「余った母乳」でOKなのです。
「母乳の分泌がよく、出過ぎて辛い」「子供が母乳をあまり飲まず、搾乳して捨てている」このようなママは、ドナーを検討してみてはいかがでしょうか。
また感染症を防ぐため、血液に異常がないことも重要です。母乳バンクへ登録するにはHIV1/2やHTLV-1・B型肝炎・C型肝炎・梅毒などの検査が全て陰性でなければなりません。
血液検査はドナー登録前6カ月以内に行ったものであれば有効です。またそれ以降に検査をする場合は、検査費用は母乳バンクが負担します。
同じ理由で、一時的に感染する恐れのある病気(乳腺炎や、ヘルペス・水疱瘡など)にかかった場合は、完治してからドナー登録を行いましょう。
母乳バンクでドナー登録をする手順
母乳バンクは、条件さえ合えば誰でも登録できます。
次のような手順で行われていますので、興味のある方はぜひチェックしてみてくださいね。
- 母乳バンクのホームページより事前申し込み
- 来院し検査
- ドナー登録
- 搾乳し、母乳バンクへ郵送
母乳バンクのホームページより事前申し込み
母乳バンクへの申し込みはあらかじめホームページより行います。現在は電話やファックスによる事前登録は行っていないため、必ずホームページより申し込みを行いましょう。
申し込みフォームでは、基本的な個人情報のほかにこれまでの健康状態について聞かれます。
登録する上で大切な資料となりますので、正確に答えるようにしましょう。
申し込み後、来院候補日がメールで送られてきますので、都合の良い日を返信します。予約が確定後、来院方法が案内されますので忘れないようにしましょう。
もし自宅近くに検査可能な施設があれば、優先的に紹介されます。
来院し、検査
病院や検査可能な施設へ来所し、ドナー登録が可能か否かの検査を行います。ここでの診断結果をもとに、ドナー登録可能か否かの判断がなされるのです。
ドナー登録後は搾乳器の使い方や冷凍保存方法、母乳バンクへの送付方法などの説明を受けます。
搾乳し、母乳バンクへ郵送
自分の子供が飲む量とのバランスを見ながら、搾乳を行います。
搾乳した母乳は、母乳パックに入れて冷凍し、クール便で母乳バンクへ郵送します。
送るペースはおおよそ1週間~2週間に1回です。
どんなママが母乳バンクのドナーになっているの?
ドナーになるママにはさまざまな事情があります。
単純に母乳が余ってしまう場合や、自分の子供が入院中で母乳が挙げられない場合・子供がなくなってしまったなどです。
過去には子供が1歳過ぎになるまでドナーを続けたママもいたそうですが、大体は生後6か月くらいまでが大半。母乳バンクのホームページを確認すると、正確にいつまでとは記載がありませんので、興味があれば問い合わせてみるとよいでしょう。
母乳バンクのドナーミルクはNICUの赤ちゃんの心強い味方
私はおっぱいが張りやすく、母乳が結構出るタイプだったので、もし産後に母乳バンクの存在を知っていたら登録したかったですね。
NICUに通っていた時、退院時に私が持って行っていた母乳が余っていたらしく看護師さんに「余った母乳はどうしますか?」と聞かれたんです。
その時に「ほかの赤ちゃんにあげられたらなぁ」と感じつつも処分をお願いしました。
その後子供も無事卒乳し、最近になり「母乳を提供するシステムってないのかな?」と思い、検索してみました。
そしたら出てくるじゃないですか、母乳バンクが!
すでに提供はできませんが、もし二人目を産むことがあったら、今度こそドナー登録をしてみたいな…と思いました。
体の機能が未熟なNICUの赤ちゃん。治療は病院でできますが、母乳は出産後のママにしか作れないものです。
そんな赤ちゃんが、母乳をたくさん飲んで早く卒業できるよう、願ってやみません。